コーヒーハウス・アップルジャム、時代を歩いた集いの場

彦根市元町、県道沿いで自転車を走らせていると、ひときわ目立つ赤い屋根とうす黄色の壁の家が建っていた。思わず走らせていた自転車を止め、店の前に立つ。黄、オレンジのマリーゴールドがすまし顔で私を迎えてくれた。店のドアの前まで行くと、ドアがそっと開き、店主の津田孝子さんが待っていてくれた。これが私の「コーヒーハウス・アップルジャム」との出逢いだ。

アンティーク小物を置く、お洒落な喫茶店

コーヒーハウス・アップルジャム(以下、アップルジャム)は、昭和56年から36年間営業を続けている歴史あるカフェ(喫茶店)だ。お店の看板メニューのサンドイッチは、中に卵焼きが挟まれているのが印象的。かわいらしく整えられた見た目や、その見た目に引けを取らない味がなんとも魅力的だ。

他にも紅茶、カフェオレ、季節のケーキと、ちょっとしたお茶の席や休憩には満足できるメニューが並ぶ。食事だけではない。お店のひと区画にはアンティークの小物にアクセサリー、古着がところ狭しと並んでいて、これらも購入可能である。

お店の客層は、他府県からの観光客が大部分を占めているようだ。みな、ひときわ目立つお店の外装に足を止めるのだそう。客の中にはもちろん常連さんも。毎度、津田さんとの会話に花を咲かせている。ところがこのアップルジャム、どうやらただのカフェではないらしい。津田さんにお話を聞いてみた。

アップルジャムの歩み

アップルジャムが開店した当初、津田さんは夫婦二人と学生アルバイト4人を加えて開店直後の最繁期をのりきった。当時、いわゆる喫茶店ブームから10年余り、彦根のまちにはファミレスもコンビニも一店舗もない時代だった。喫茶店だったアップルジャムには、日々大勢の若者が足を運び、そこを集いの場にしたという。津田さん夫婦は毎日夜の10時までお店を開け、山あり谷ありの6年を駆け抜けたそうだ。

実は、アップルジャムと津田さんの間にはびっくりする過去がある。今から17年ほど前にさかのぼるが、ちょっとした趣味でお店の周りをお花でいっぱいにした津田さん。なんと、そのセンスが認められ、「全国花のまちづくりコンクール」の企業部門で優良賞を獲得したのだ!

それからしばらく、アップルジャムにはお花の好きなお客さんが集まるようになったという。またちょうどその頃、津田さんの隣にはいつも愛犬、愛猫がいた。当時愛情をそそいだ愛犬たちは、お店の中を駆け回ったという。津田さんいわく、「日本初の猫カフェ!」。とても楽しそうに話す津田さんからは、当時の温かい情景がひしひしと伝わってきた。

昔からの集いの場

そんなアップルジャム、現在は月に2回、認知症カフェを開催している(「HOTカフェんde元町」毎月第1水曜日、第3水曜日11:00~14:30)。認知症という病気の方とそのご家族、地域の皆様が集まり、楽しい時間を過ごしている。

お店には毎回20名を超える人々が訪れるそう。たくさんの人が集まり同じ時間を共有するその空間は、何か不思議なパワーを感じさせる。
「大変なこともあるけれど、いろんな人の助けがあるからやっていける。思わぬラッキー、それを信じている。」と、店主の津田さんは言う。

元々、母親の介護がきっかけで縁ができた認知症カフェ。介護も含めて、一筋縄ではいかないことが多かった。しかしそんな時こそ、津田さんは「思わぬラッキー」を信じたという。認知症カフェに集まる友人や地域のボランティアさん、さらにはお世話になっている介護福祉士さん。そういった人たちとお互いに助け合い、楽しみながら、津田さんはこのお店とともに歩んできた。

コーヒーハウス・アップルジャム。ずっとずっと昔からの人々の集いの場。ただのカフェではありません。たくさんの人との出会い、縁、お互いの助け合い。そんな素敵なパワーが感じられる場所が、彦根にはあります。


コーヒーハウス「アップルジャム」

滋賀県彦根市元町1-17
TEL:0749‐24‐3326
営業時間:9:00~18:00
年中無休

(市民ライター:菊地葵衣)

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