麺は麺でも個性派ぞろい。今なお進化し続ける、ちゃんぽんとラーメンの専門店3軒

彦根の麺類といえば、近江ちゃんぽんが有名。昭和38年創業の「麺類をかべ(現・ちゃんぽん亭総本家)」がその元祖と言われるが、じつはちゃんぽんに限らず、うどんやラーメンなど、彦根は麺の食文化が豊かな土地と言える。「をかべ」の味を継承するちゃんぽんの専門店、和風だしをベースにした中華そば、新しいラーメンのあり方を求めて進化し続ける新興ラーメン店など、個性派ぞろいの名店3軒を紹介したい。

時折むしょうに食べたくなる正当派、近江ちゃんぽん屋「本気」

本気と書いて“マジ”と読む。店の主人が好きなヤクザの漫画タイトルをそのまま店名にしたというこの店は1994年に開業。ご主人の立澤さんは一見強面ながら、笑うと愛嬌のある優しそうな方。「ちょっとでも手ぇ抜くと味が変わるもんで」と、ちゃんぽんに向き合う姿勢はいたって本気である。 

さっそく定番のちゃんぽんをつくっていただくことに。豚肉にキャベツ、ニンジン、もやしといった野菜をたっぷり炒め、それをもっちりと茹で上げたちゃんぽん麺にかけてスープを注ぐ。

豚肉や野菜がたっぷり入っていてボリューミー。スープが優しい味わいのため、子どもからお年寄りまで食べやすい。

長崎ちゃんぽんや博多ちゃんぽんとは「まったくの別モノ」と地元の人が口を揃える「近江ちゃんぽん」は、とんこつスープではなく、カツオと昆布をベースにした和風だし。やさしい味わいでも、油のコクが効いているためパンチがある。野菜や肉など具だくさんなので食べ応えがあり、満足度も高い。

運んできてくれたのは、末っ子の享弥くん。小学6年生ながら店をよく手伝うのだという。「家族の食べる分は自分でつくりよるで」と店主も嬉しそう。

なんと、店主の叔父さんが「をかべ」の創業者で親戚筋にあたり、だしの引き方もその方法から受け継いでいるのだそう。ある意味で元祖「をかべ」の味の正統な後継者でもある。「味が変わらんように」の一心で、使用する野菜やスープの濃さなど細部に気を遣う。

客層は、赤ちゃん抱えたお母さんからお年寄りまでと幅広い。
彦根に来たら、老舗のまっとうな味を継承するこの店「本気」を一度は訪れたい。


本気

滋賀県彦根市銀座町1−6
TEL:0749-27-3340
営業:11:00〜20:30(火曜日のみ14:00まで)


和風だしの中華そばが食べられる、昔懐かしの味「ミツワ食堂」

こちらは今年で70年目になる「ミツワ食堂」。昭和22年の創業で、麺類から定食、甘味まで庶民的な食堂として愛されてきた。中でもほとんどのお客さんが頼むという看板商品が「中華そば」。ラーメンなのに和風だし、という懐かしい味のラーメンである。

「祖父が開業した時はアイスキャンデー屋だったらしいんです。その後うどん屋になって、父の代で中華そばをするようになって」と話してくれたのは、3代目の安田茂さん。

味見させていただくと、うどんとラーメンが見事に融合したような逸品。カツオと昆布だしのスープがまろやかで滋味深い。

「うどんのだしそのままでは少し薄いから、工夫してラーメンに合うようにしたんでしょうね。私も父の頃の味をなるべく変えないようにやっています」。

奥さんのきぬ子さんは「ほかの中華そばはコッテリしすぎて食べられないけど、ここのやったら食べられるって通ってこられる方もいるんですよ」と誇らしそうだった。

「銀座街」のアーケード商店街に位置するミツワ食堂。

さらに、今なお現役の看板娘が、安田さんのお母さんである御年85歳の文子さん。

「昔は近くに映画館や百貨店もあったから、座ってる暇もないくらいお客さんが来てね。出かけたついでに家族みんなで来て中華そばとソフトクリームを食べて帰るのが楽しみって人が多かったんですよ」

湯気を浴びるのと昆布だしを摂るので、今もお肌つやつやの文子さん。

きっと今もミツワの味は多くの人の記憶に刻まれている。40年ぶりにこの味を求めて訪れる人もいるし、「おばあちゃん、元気にしてはる?」って文子さんに会いに来る方もいるのだそう。

18時になると1階の食堂を閉めて、2階の居酒屋に移動。こちらは広々としたスペースの居酒屋で、隣にはカラオケのできる個室も。

彦根に歴史を刻む店、ミツワ食堂で昔懐かしいやさしい味の中華そばとソフトクリームをぜひ味わってみてほしい。


ミツワ食堂

滋賀県彦根市銀座町6−1
TEL:0749-22-1261
営業:11:00~23:00(18時以降は2階で営業)[休]木


クセになるおいしさ、攻めのラーメンでも万人に愛される「ラーメンにっこう」

2005年に開業の「ラーメンにっこう」は彦根の中心市街地からは少し離れており車で約15分ほどだが、週末には行列のできる人気店だ。ラーメン好きが高じてラーメン屋を始めたという西川浩司氏が学生時代の自分のあだ名から「にっこう」と名付けられたという。

定番メニューは鶏白湯(とりぱいたん)と、日香麺(にっこうめん)の塩味と醤油味という新しいタイプのラーメンながら、食べる人を選ばないのが売りだという。

「うちのラーメンは嫌いな人、食べられないという人が少ないんです」と教えてくれたのは、スタッフの山脇直人さん。例えば、こってりしたとんこつの濃厚ラーメンは人によって好みがはっきりわかれる。だがにっこうでは、どの味の商品でも万人においしいと言ってもらえるものを目指しているということ。

鶏白湯(手前)と、日香麺の晴香(奥)。ほかにもつけ麺タイプの「柚子白湯(ゆずぱいたん)」やたまり醤油の黒いスープの「湖国ブラック」などがある。

鶏白湯は見た目どおり、まろやかな味の鶏だしスープで麺としっくり馴染んでいて全体的に優しい味。日香麺の醤油味は味がしっかりしていて、醤油の香りが香ばしく、味玉によく合う。どちらもいくら食べても飽きがこないのは、化学調味料を一切使用していないことに理由があるかもしれない。

山脇さんが身に付けていたTシャツには「ラーメンさぼりま10(テン)」の文字。

「店の10周年記念でつくったTシャツです。オーナーは本当にラーメンが大好きで、おいしいラーメンを追求してきました。自分も刺激を受けてここで修業中。いつかは独立して店をもちたい」と山脇さん。

若いスタッフが多く、女性比率も高い。そのせいかラーメン屋にありがちな、油まみれで汚れた狭いイメージとはまるで違い、店内全体が清潔感があって広く開放的。
ラーメンでは攻めている。2014年には「宅麺.com」で最も売れたラーメン・つけ麺として、「お取り寄せラーメンオブザイヤー塩部門賞」を受賞。2017年にはNYでのラーメンコンテストにも出品予定。ヨーロッパ進出に向けて準備中で、近くオランダに出店予定なのだとか。

さらにはオーナーのこだわりで、全国各地のご当地クラフトビールを置いている。クラフトビールにこだわりラーメン。その黄金コンビを味わうことができるのは幸せだ。
これから「ラーメンにっこう」のさらなる躍進を期待したい。


ラーメンにっこう

滋賀県彦根市宇尾町1366-2
TEL:0749-28-2035
営業:11:30~14:30/17:30~21:00(土日祝は11:30〜21:00)[休]月(祝日の場合は翌平日)

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